シリコンバレー銀行(SVB)といった地域銀行の破綻が相次いだことにより、「公営で安全な郵便貯金を復活させよ」との声が上がっているのだ。これまでも公営銀行は議論の的とされていたが、今回の提言における新たな狙いが「政府によるフィンテック」として郵便貯金を復活させることだという。一体どういうことなのか。
米国人の“5割”が感じる「預金の不安」
米国では2023年3月以来、SVB、シグネチャー・バンク、そしてファースト・リパブリック銀行という中堅の3つの地方銀行が相次いで破綻した。しかし現段階では金融不安の広がりは抑えられている。
金融の安定を優先する米連邦預金保険公社(FDIC)が、預金者の負担となるはずの預金損失を全額補償するなど、救済措置を図ったからだ。
社会的な影響を勘案した結果だが、米国人からは「民間の金融機関にお金を預ければ損失を被るかもしれない」と改めて認識された。
事実、預金者の多くが、(一般的に地方銀行より安全だと見られている)大手銀行にお金をシフトしたことが報告されている。
だが、「つぶれにくい」とされる大手金融機関でも安泰とは言えない。
米世論調査大手のギャラップは金融不安の続いていた4月に、およそ1000人の成人を対象とした調査を実施。
その結果、「あなたが銀行やその他の金融機関に預金しているお金について心配ですか」という問いに対し、19%が「とても心配」、29%が「ある程度心配」と回答し、合計で48%の米国人が預金に不安を感じていることが判明した。
こうした中、4月21日に米郵政公社職員労働組合(APWU)のマーク・ダイモンドスタイン委員長は米政治ニュースサイト「ザ・ヒル」に寄稿し、「SVBなどの破綻で引き起こされた金融危機は、銀行のシステムそのものが連邦政府の預金保険や、ローン保証・金利の設定に完全に依存していることを白日の下に晒した」と指摘した。
民業と言えども、実は政府の「見えない大きな手のひらの上」で踊っているにすぎないというわけだ。
ダイモンドスタイン氏はさらに、「政府はすでに銀行を下支えしているのだから、それをさらに拡充して、安全で手数料の安い銀行口座を国民に提供すべきだ」と踏み込んで主張した。
理論上、政府は民間企業のように破綻しないので、国民に安定した金融サービスを提供できる。
また営利目的でないことから、最低預金残高の縛りもなく、口座の残高が不足した場合の当座貸越手数料も請求されない。
決済手数料も無料になるという。
ダイモンドスタイン氏は、連邦政府がそのようなサービスを提供する最善の方法が、1911年から1967年まで55年間存在した郵便貯金を復活させることだと論じた。
なんと“590万世帯”が口座を持たない?
かつての郵便貯金は1930年代に起きた世界恐慌という大波にも耐え、特に商業銀行の支店がまばらな地方や都市部の貧困地域において、簡易で頼りになる金融機関だった。
しかし、商業銀行が提供する高利回りに対抗できず、1947年のピーク時を境に、徐々に郵便貯金の利用者は減っていた。
そして、ジョンソン政権が1960年代に進めた政府合理化の対象となり、ついには1967年に廃止されたのである。
廃止から半世紀を経た今、営利目的の金融機関を敬遠する低所得者層や地方の金融弱者が増加、これが社会問題化している。米連邦預金保険公社(FDIC)の2021年の調査によれば、米国の全世帯の4.5%に相当する590万世帯が金融機関の口座を持っていなかった。
信用度が低く金融機関で口座を開設できない世帯は、小切手の現金化や給料前借りサービスといった余計な手数料の支払いに、世帯収入の10%近い2,412ドル(年間平均、約33.6万円)を費やしている。
その上、こうした金融弱者を相手にしない銀行が放漫経営に手を染め、金融の安定をたびたび損ねることに関しても問題点の検証が深まり、郵便貯金復活などが議論されるようになったわけだ。
だが、この郵便貯金復活の提言における真新しい狙いはほかにある。
それが、デジタル口座やデジタルドルなどに絡んだ「政府によるフィンテック」として郵便貯金を復活させることだ。
「フィンテック×郵便貯金」の深すぎる意義
まずダイモンドスタイン氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)が直接、消費者や企業に手数料無料で提供するデジタル上の預金口座「FedAccount」として郵便貯金を使うことを提言した。
個人や企業による365日24時間の即時送金や決済が可能な21世紀型のデジタル金融サービスとして郵便貯金を復活させるべきだとの見解だ。 FedAccountは、ホワイトハウスのラエル・ブレイナード国家経済会議(NEC)委員長や、米上院銀行委員会のシェロッド・ブラウン委員長(民主党)、さらにマサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員(民主党)などが旗振り役となって推進されている構想だ。
これは、7月に先行稼働するデジタル即時決済システム「FedNow」とも深い関係にある。
なぜなら、米国版の中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタルドル」の導入を見据えるFRBが2019年から開発を進め、試験運用を重ねるなど正式な展開に備えてきたものであるからだ。
現在は小切手が振り出されて1~2営業日、週末の場合は週明けまで現金化に時間がかかるものが、振出口座に送金額相当の現金があれば365日24時間、いつでも数秒で現金化できる。
FedNowとの併用で「フィンテックとしての郵便貯金」が無料、あるいは最低限の手数料で、社会から取り残された低所得層や、銀行が顧みない田舎の消費者に提供するならば、公営の金融サービスとしての意義はあると言えよう。
忘れてはならない「郵便貯金の落とし穴」
しかし、フィンテックとしての郵便貯金は良いこと尽くめではなく、大きな落とし穴があることも忘れてはならない。
その理由として反対論者からは、設立・運営が高コスト・高リスクであると指摘されている。
米国銀行協会(ABA)のロブ・ニコルズ会長は有力地方紙フィラデルフィア・インクワイアラー紙への寄稿で、「公営銀行のアイデアは新しいものではないが、19世紀に全米で設立された何十もの公営銀行のほとんどは巨額の損失を出して破綻している。
たとえばバーモント州の州立銀行は1806年に設立されたが、その6年後に現在の貨幣価値で30億ドル(約4,180億円)の損失を計上して破綻した。1981年につぶれたデラウェア州の農民銀行も、損失は州民負担となった」と指摘。
その上で「現在も運営されているのは、米領サモアと、民間との連携で設立されたノースダコタ州の2行だけだ」と説明した。
また、カリフォルニア州サンフランシスコ市が検討中の公営銀行についても、「収支がトントンになるまでに、最大39億ドル(約5,434億円)の公金投入と56年の時間が必要になると試算されている」と斬り捨てた。
さらには「政権に近い勢力に対して、公営銀行が返済の裏付けのないローンを貸し付ける動機もある」として、郵便貯金の復活に疑義を呈した。 ニコルズ会長の意見が、郵便貯金と競合することになる銀行業界の反対論であることは差し引いて考える必要がある。
だが、金融サービスの設立・運営には高いコストがかかり、それに公金が投入されるのは好ましくない、とのニコルズ氏の見解は、財政緊縮に傾く米世論に訴求するものがある。
米国版ゆうちょ復活のカギが「デジタル決済」と言えるワケ
このように、銀行の破綻や金融弱者の包摂で注目される、フィンテック化した米国版ゆうちょの復活論は前途多難だ。
そのため、FedAccountに関してはさらなる突っ込んだ論争が行われるだろう。また、デジタルドルに関しても、国民のプライバシーを侵害するものとして反対は根強いため、政治的な決断が必要になる。
そうした中で、デジタル即時決済システムのFedNowは、「デジタルドル実現のためのトロイの木馬」(共和党大統領予選候補であるフロリダ州のロン・デサンティス知事や民主党大統領予選候補のロバート・ケネディ・ジュニア上院議員で構成する派閥)など反対派から疑いの目を向けられながらも、即時決済フィンテックの世界市場における米国の優越性を確立させる意味からも、最も抵抗が少ない。
つまり、連邦政府が関与する金融サービスで最も成功の確率が高いのが、すでに立ち上がっているFedNowであり、デジタルドルやFedAccountへの発展的拡張の基礎となり得る存在なのだ。
FedNowがデジタル決済において消費者に受け入れられる主流的な存在となれば、連邦政府がデジタルドルやFedAccountを前面に押し出した金融サービスへ再進出する可能性も高まる。
FedNowの成否に、安全で低コストの郵便貯金の復活もかかっている。
5割が感じる“預金の不安”…56年ぶりにブチ上がった「米国版ゆうちょ」復活論とは/記事考察
この記事は米国における郵便貯金の復活論について詳しく説明しています。
米国では地域銀行の破綻が相次ぎ、金融不安が広がっているといる状況があります。
そのため、政府による安全な公営銀行の復活が提案されています。アメリカは公営の銀行てなかったんですね・・。
記事では、ゆうちょ銀行のような公営銀行の復活には政府によるフィンテックの活用が重要であり、デジタル口座やデジタルドルの導入を通じて、安定した金融サービスを提供できると指摘されています。
特に、デジタル即時決済システムのFedNowが重要な役割を果たす可能性があるとされています。
一方で、公営銀行の復活にはいくつかの課題やリスクの存在が指摘されています。
設立や運営に高いコストがかかることが想定され、当然ながら公金の投入が必要になることが指摘されています。
また、デジタルドルやFedAccountに関しては、プライバシーの問題や反対意見が存在し、政治的な決断が求められるようです。
FedNowがデジタル決済の主流となることで、連邦政府がデジタルドルやFedAccountを推進する可能性が高まりそうです。
連邦政府による金融サービスの再進出が実現すれば、安全で低コストな郵便貯金の復活も可能性として浮上すると述べられています。
日本は「デジタル円」などフィンテックは進んでいる印象はありませんが、郵貯を当たり前のように利用できる・・というのは実はメリットが大きいのかもしれません。
他行に比べて手数料なども安かったりしますよね。今の時代振り込み手数料なども積み重なるとバカにできませんからね・・。
信頼できるショップとのクレカ現金化も有用な時代
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