シリコンバレー銀行の経営破綻からはじまり、シグネチャー銀行、ファースト・リパブリック銀行などここ数ヶ月で複数の銀行が経営破綻しました。
一部の有識者やメディアは「リーマンショックの再来」と表現しています。
日本では米国株に投資する投資信託や米国の個別銘柄、債券などに投資をしている個人投資家も多くいるため、今後の米国経済や株式市場の行方に不安に感じている方も多いかと思います。
今回は不安を小さくするために、まずは米国が抱えている問題点を整理したうえで、どのような投資行動をとればいいかを書いていきます。

相次ぐ銀行破綻の背景

3月に米国でシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、シルバーゲート銀行と複数の銀行が経営破綻に追い込まれました。
その理由を一言で表せば「取り付け騒ぎ」となります。
取り付け騒ぎというと、教科書などで銀行の前に人だかりができている写真などをみたという方も多いと思いますが、まさか現代においても取り付け騒ぎという言葉を聞くことになるとは思わなかったのではないでしょうか。
銀行の破綻が相次ぐと不安になる気持ちは分かりますが、過度に不安になる前に、しっかりと破綻の背景を理解することが重要です。
分かりやすいところでシリコンバレー銀行の例を考えます。 シリコンバレー銀行は顧客の多くがベンチャー企業でした。
コロナ前から米国では金融緩和が行われており、カネ余りの状況が続いていたことから、シリコンバレー銀行は融資で稼ぐという銀行本来のビジネスモデルがうまくまわっていませんでした。
そこで、米国の地方債やMBS(住宅ローン担保証券)で資金を運用していたのですが、米国でインフレ率が高まり、中央銀行にあたるFRBが1年かけて急速に金利を引き上げると、カネ余り状況が一変しました。
ベンチャー企業の多くが預金を引き出して経営資金を用意しようとしたのですが、金利が上がっているということは運用に使っていた債券の価格は下がっていることを意味します。
債券ですから満期まで保有していれば問題ないのですが、顧客の預金引き出しに対応する必要がある事から、巨額の含み損がある状態で債券を現金化することになってしまったのです。そこで、資本増強をすべく増資計画を発表したものの、むしろそれが経営不安を印象付けてしまいました。
現代はSNS社会ですから、「あそこの銀行は危ないんじゃないか」という噂が一気に広まると、急速に預金が流出してしまったわけです。
しかも、いまはネット銀行が主流ですから、わざわざ店舗やATMに行かずともネットで出金指示ができてしまうため、取り付け騒ぎも過去のケースとは比にならないスピードで起きてしまうのです。
このような流れを受けて、5月にはファースト・リパブリック銀行も経営破綻に追い込まれたのでした。

米国に存在する3つの崖

米国では銀行破綻以外にも不安要素があります。
1つ目は前述の相次ぐ銀行破綻を背景に、各銀行が貸出態度を厳格化しているということです。
FRBが公表した銀行融資担当調査によると、すでに融資基準の厳しさは過去の景気後退局面とほぼ同じレベルに達しています。
2つ目はすでに報道でも知っている方は多いと思いますが、米国の債務上限問題です。
これまでも米国の債務上限問題は何度も浮上しており、その都度何事もなく終わっているので、今回も同様の展開になると考える方が多いのですが、それでも投資家にとっては「今度こそ…」と不安になってしまうものです。
3つ目は米国のインフレ問題です。
一時期に比べれば利上げの効果もあり、インフレ率は鈍化してきましたが、それでも通常時に比べれば依然として高い水準にあります。
インフレ率と同等かそれ以上に賃金が上昇しない限り消費が落ち込むのは明白ですが、いまのところはそのような様子は確認されません。
それは、コロナ禍において発生した強制貯蓄の存在によるものでした。
コロナ対策で巨額の財政出動をしたものの、一方で消費者はロックダウンなどもあり消費にお金をまわさなかったため、強制的に貯蓄をさせられていたということです。
ここ1年のインフレ局面ではその備えで対応ができたのですが、いよいよこの強制貯蓄も年末から来年にかけて底をつくと試算されており、そこまでにインフレが鎮静化していなければ、インフレがいままで以上に景気の下押し圧力となるのです。

FRBの難しい舵取り

投資家にとって更に悩ましいのが、FRB自身も金融政策の舵取りに苦しんでいるということが挙げられます。
FRBはデュアルマンデートといって、物価の安定と雇用の安定という2つの目標を持っています。
これまでは労働市場が堅調だったため、インフレだけを見て金融政策を考えればよかったのですが、今後はそういう訳にもいかなくなるでしょう。
前述の通り、米国では各民間銀行が貸出態度を厳格化しているのですが、今後は更に厳格化されていくと考えます。
過去のデータをみてみると、貸出態度が厳格化すると失業者数が増加するという相関関係が確認されており、その関係を今回にも当てはめるのであれば、今後は労働市場が悪化することが容易に想像できます。
そうなると、今後発表されるインフレ率が依然として高水準だったとしても、これまでのように「じゃあ利上げしよう」というようなシンプルな意思決定ができなくなってしまうのです。
インフレを抑えるためには利上げすべきだけど、悪化する労働市場を横目に見てしまうと安易に利上げの判断はできない。
しかし、利上げが不十分だとインフレが抑えられない、という板挟みの状態にFRBが追い込まれているわけです。
執筆時点では市場はすでに年内の利下げを織り込んでいますが、一方でFRBは一旦の利上げ停止を匂わせつつも、データ次第ではまだ利上げの余地はあるとしています。
すでに市場との対話も出来ていない状態にあるのです。

やることは変わらない

さて、ここまで米国経済が直面している悪材料を延々と書き連ねてきましたが、もしかすると不安が一層高まったという方もいるかもしれません。
しかし、安心して下さい。すでに米国の株式市場に投資信託(主にインデックス投信)を活用して投資をしている方は、 外部環境を気にせず淡々と機械的に積み立てておけばよい のです。
どれだけ現状を正確に把握したところで、株価が将来どう動くかなど予測できません。もちろん、現状を把握しているからこそ避けられるリスクなどは存在するとは思いますが、とはいえ、それすらも100%ではありません。
株式市場に投資するというリスクを取ると意思決定したのであれば、外部環境の変化に動じずに淡々と積立投資を続けていればいいのです。
しかし、 個別銘柄や債券に投資している方は、少し注意が必要 です。
大きく下落している銀行株に下心を出して投資をすると、結果的に「落ちるナイフを掴む」ことになってしまうかもしれません。
あまり投資にリソースを割きたくない方は、米国のインデックス投信を積み立てていくことをお勧めします。特に来年からはNISAが拡充されるので、タイミングとしてもよいのではないでしょうか。

この記事は米国の経済状況に関する不安要素を取り上げており、特に相次ぐ銀行の破綻や債務上限問題、インフレに焦点を当てています。

記事でも扱われた「債務上限」は最近引き上げが決定されましたね。

もう70回以上引き上げられてきたはずなので、ここでデフォルトは無い!と思う方が多数だと思いますが、何が起こるか分かんないですもんね・・・。

銀行の破綻が取り上げられていますが、背景を理解することが重要です。

シリコンバレー銀行の例では、金融緩和によるカネ余り状況とインフレの上昇が銀行の経営に影響を与えました。銀行破綻は大きく報道されましたね。

預金引き出しに対応するために債券を現金化しなければならなかった結果、銀行の経営不安が広まり、預金が流出しました。

また、米国では銀行破綻以外にも貸出態度の厳格化や債務上限問題、インフレの問題が存在しています。

これらの要素が経済や投資に与える影響は懸念されます。

さらに、FRB自身も金融政策の舵取りに苦しんでおり、インフレを抑えるための利上げが労働市場の悪化という問題と関連しています。FRBの判断も難しい状況にあります。

2023年の物価高・エネルギー高もあり、家計や個人も皆苦しんでる印象です。

個人としてはやはり、急な出費など対応できる現金化の方法をあらかじめ理解しておくというのも重要と言えます。

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